幼児にクロールの呼吸を指導する場合のポイント
初めに
クロールの呼吸法の練習は、ノーブレクロールが出来るよ
うになると始めます。
5m位のノーブレクロールが出来るようになると、呼吸を
しなければそれ以上泳げるようになりません。
ですから、呼吸クロールを教えだすタイミングとしては
ノーブレクロールを教えだすころに連続呼吸の練習に入る
のが良いと思います。
面かぶりキック(顔を水中に入れてキックで進む)が出
来るようになっても、次の手を回す練習(ノーブレクロー
ル)をずっとしているわけではありません。
同じことばかりやっていると、飽きてしまい、かってに
遊びだします。
飽きないように、いろいろな練習法を次々に展開してゆ
くと、最後まで集中してやってくれます。
子供がコーチの言うことを聞かずに遊び廻っているのは、
同じことばかりやっているとか、自分の番がなかなか来な
くて飽きている証拠です。
「子供が勝手なことをしてなかなかいうことを聞いてく
れない。」と愚痴を言うコーチは練習の組み立てが悪いせ
いです。
1回自分の練習内容を見直してみましょう。
子供は体を動かしたいのです。
動き回りたいのにじっとしている時間が長ければかって
に動き出すのは当たり前です。
どんどん動けば休みたくなりますのでじっとしています。
要は、言うことを聞かないのは練習メニューが悪い、コ
ーチの責任です。
そういった事を解決するテクニックがありますので、学
んでいきましょう。
まずは、飽きさせないほど豊富なメニューが必要です。
1.基本呼吸の確認
2.連続呼吸練習
前後呼吸 (壁・ビート版・なし)(静止・移動)
上下呼吸(アップダウン・ジャンプ呼吸)
左右呼吸
片手伸ばし横向き呼吸
3.クオール(プル付き(手))呼吸練習
片手呼吸練習(壁・ビート版・なし)(静止・移動)
クロール(両手)呼吸練習(壁・ビート版・なし)
(静止・移動)
付属練習
犬かき(前あげ呼吸)
背浮き呼吸
練習形態によるメニュー作り
全体練習
個人練習
グループ練習
練習の途中休み・W-UP/C-DN
腰掛キック・水鉄砲・バブルリング・遊び
1.基本呼吸の確認
基本的呼吸の確認とは
潜れるが、水中から顔を出すときに、口に水を入れたま
ま顔を上げ、上げてから口から水を出し呼吸する。
と言う場合があります。
本人も気が付かないし、コーチも気が付かない場合があ
ります。
間違った先入観や間違った指導法によりそのことに気が
付かない場合もあります。
浮いたり、潜ったりして、顔を上げる分には、口から水
を出してから呼吸すれば、問題なく呼吸できるのですが、
連続呼吸となるとそうはいきません。
口が水上に出てから口をあくように練習してから連続呼
吸に入りましょう。
最初の呼吸法の指導で、「顔を上げたらすぐに吸えるよ
うに、水中で息を吐きましょう。吐かなければ吸えません。」
と教えられて、口を開くのが早すぎて口の中に水が残っ
てしまう場合が多くあります。
呼吸法の基本(第1歩)は、「水中で口を開かない。」
です。
しっかり、口が水上に出てから息を吸いましょう。
ベビースイミングや幼児水泳の教程にある、アップダ
ウンも水中では息を止めてください。
実は成人の初心者呼吸法も同じです。
成人の初心者水泳で呼吸がどうしてもうまくいかない
という人の中に、水中で吐きすぎて顔を上げるときに口
の中に水がある人がいます。
一生懸命練習するので余計癖になって直せない場合が
あります。
その後、連続呼吸に入るころから、水中から吐きなが
ら上げるに変わっていきます。
2.連続呼吸練習
1.壁前後呼吸
プールの壁に両手で捕まり顔を水中に入れ、次に前に
挙げて呼吸します。
基本呼吸練習から連続呼吸練習に替わっていきます。
水中から吐きながら上げます。
水上に出るまで吐いていないと口の中に水が入ります。
口が水上に出るまで吐いているか確認しましょう。
ある程度できるようになったら、テンポを一定にして
20くらいまでカウントします。
(これは全体練習で行います)
全体練習=全員一緒に練習します
2.ビート版前後呼吸・歩行呼吸
1.と同じ前後呼吸ですが、ビート版をもって行います
壁につかまるより、不安定になるので少し難度が増しま
す。
全体練習でやるときは、ビート版の先を壁につけて行う
方法と壁にお尻をつけてプール側を向いて行う方法があり
ます。
移動しながら行う時は個人練習法とグループ練習法(2
~3人一緒に行う)があります。
歩きながら前後呼吸をします。
いずれも習熟度でどの練習がよいか決めますがプール
状況で全体練習がやりやすいとか個人練習がやりやすい
があると思います。
3.ビート版なし、前後呼吸
なにも支えのない呼吸練習なので不安定ですが、その
分自由にできます。
いろいろな方法、いろいろな移動方法で行ってみまし
ょう。
4.上下呼吸(ジャンプ)
上下呼吸はアップダウンになったり、ジャンプ呼吸に
なったりします。
前を見たまま、上下します。
少し深い、背の立たないところでのジャンプ呼吸がで
きるようになると深いプール対策になります。
上に上がった時。顎が水面についている状態で呼吸出
来るようになるまで練習しましょう。
手順は前後呼吸と同じです。
1.壁につかまって上下ジャンプ呼吸
2.ビート板につかまってジャンプ呼吸
3.ビート板なしジャンプ呼吸
4.ジャンプしながら移動ジャンプ呼吸
5.左右呼吸(横向き呼吸)
横を向く練習になります。
横を向いたとき、顔(頭)が水面に一部ついたまま横
を向いて呼吸できるようになるまで練習しましょう。
これも手順は一緒です。
簡単な方法からやっていきます。
1.壁に両手で捕まって右側横向き練習、左側横向き
練習です
(最初は両方やってみて、やりやすいほうを見つけ
ましょう。)
2.出来るようになったら、片手で捕まって、片手は
後ろで横向き呼吸練習をしましょう。
3.次は、壁ではなくビート板につかまって横向き
呼吸の練習をしましょう。
4.出来るようになったら、歩きながら横向き呼吸
練習をしましょう。
これも、両手で捕まる、から片手で捕まる等を入れ
ると練習メニューが増えます。
3.クロール呼吸練習
1.クロールのプル(手の動作)と呼吸
いよいよクロールのプル(手の動作)と呼吸練習を
合体させます。
クロールの手の練習も最初は壁につかまって、手を回
す練習をしたほうが良いのです。
同じように両手で捕まって、手をまわし、横向き呼吸
を行います。
この場合は、少して手順が逆で、片手で捕まって、呼吸
する側のみ手をまわして顔を上げる練習を先にしましょう。
出来るようになったら、両手をまわして呼吸する側のみ
横を向き呼吸します。
1.壁に片手で捕まり、顔を上げるほうの手のみ回して
呼吸練習です。
最初は手と顔を上げるのが一致しないので、手を上げ
るとき顔を上げるようになるまで片手で練習します。
2.次に、両手で壁に捕まり、手をまわしながら呼吸す
る方のみ顔を上げ呼吸します。
3.出来るようになったら、ビート板につかまり、片手
両手とやってみましょう。
4.出来るようになったら、ウオーキング付きビート板
片手クロール、歩行付き両手クロールとやってみましょ
う。
これで、泳ぎながら呼吸練習の準備が整いました。
2.呼吸クロール(1)
このまますぐにビート板を持った呼吸クロールの練習
にも入れますが、全体練習と個別練習を思い出しましょ
う。
今まで個別練習が多いと待っている時間が長いはずで
す。
そんな時は、全員を壁につかまらせて全体練習を行
いましょう。
両手で壁につかまり、バタ足をしながら腕をまわし顔
を横に上げて呼吸します。
個々の練習時間も多くなるし同時にみんなで練習でき
ます。
その後、個々に行う練習に入れば練習も締まってきま
す。
個別練習ではまだビート板を持ったままのクロール呼
吸で行います。
1.壁呼吸クロール練習(全体練習)
プールの壁につかまって、手をまわして、バタ足
をして呼吸をして泳ぎます。
2.ビート板付き片手呼吸クロール(個別練習)
普通にビート板をもって片手で呼吸をして泳ぎま
す。
3.ビート板付き両手呼吸クロール(個別練習)
ビート板をもって交互に持ち替えて、手をまわして
バタ足をして泳ぎます。
4.小さいビート板がある場合は、小さいビート板を
もってやる場合もあります。
5.もちろんヘルパーをつけてやる場合もあります。
3.呼吸クロール(2)
いよいよビート板等の補助なし呼吸クロールに入ります。
フォームは無茶苦茶でも、顔を水上に挙げて呼吸できる
と言うことが非常に大切なので、個人練習で最初に行いま
す。
1回目の呼吸のタイミングで下から上腕のあたりを持ち上
げて呼吸をしてもらいます。
1回の成功体験が非常に重要です。
「あー、呼吸して泳ぐとはこういうことか」と理解できま
す。
最初は、長い距離を呼吸して泳げなくても構いません。
1回でいいのです。
1回だけで良いので顔を上げて呼吸出来るようにしまし
ょう。
ダメな例は、顔は水上に出ているし口も空いているが
吸っていない、呼吸していない場合があります。
これはダメです、呼吸出来るようにしましょう。
4.付属練習
1.犬かきを泳いでみよう!
付属練習はほんとに付録のような練習ですが、実はと
っても重要です。
遊びで行っても良いのですが、犬かきをやってみてくだ
さい。
手は一緒に掻いても交互でも構いません。
足はバタ足です。
顔は前にあげます。
クロールとは這うという意味があります。
まさに、犬かきはクロールです。
犬かきは手と足と呼吸という三つの動作を同時に行わな
ければいけません。
これは、泳ぎのクロールと一緒です。
泳ぎのクロールと違う点は、ローリングとピッチングの
違いです。
クロールは体を横に倒して呼吸しますが、犬かきは前に
体を起こして呼吸します。横回転と縦回転の違いです。
実は前に体を起こす動作がどうしてもできなくて顔が水
上に出ない人は、水を押さえて体を起こす犬かきが出来る
ようになると顔が水上に出るようになります。
小さい子供に理屈はいりません。
遊びで犬かきを取り入れて顔が上がるようにしましょう。
2.背浮きで呼吸
クロールの呼吸のために背浮き練習をするわけではあり
ませんが、背泳ぎの練習も多分この辺にどのクラブの教程
にも入っているんではないでしょうか。
人の体は、頭を上げようとすると沈み、潜ろうとすると
浮きます。
1.の犬かきのように、水を押さえて顔を上げなくても横
回転で頭を水中にしっかり入れると口は水上に出ます。
ですので背泳ぎも同時位に練習の中に取り入れてゆくこ
とをお勧めします。
5.練習形態によるメニュー作り
1.全体練習
全員が一緒に練習する練習方法です。
全員が一緒に同じことが練習できます。
待っている時間はありません。
たくさん練習できますが疲れます。
個人的には練習できません。
2.個人練習(個別練習)
順番に一人一人練習してゆきます。
それぞれのレベルに対応してゆきます。
自分の番まで待っていなければいけません。
待っている時間は練習できません。
3.グループ練習
2~3人のグループに分けて練習します。
ある程度か個別対応できますが個人練習ほどではあり
ません。
泳力や体力差が大きい場合にはグループ別になること
が多くなります。
4.お勧めミックスメニュー
W-UP ウオーミングアップ (全体練習)
と書くと選手の練習のようですが、小さい子供も一緒
です。
プールサイドに座って全員一緒のバタ足などから入り
ます。
その後、少しプル内を歩き回り
Main①
個人練習に入り順番で回っていきます。
Main②
全体練習、みんなで練習できるものを入れる。
気持ち的休憩(水鉄砲やバブルリング等簡単な遊び)
後半Main③
個人練習に入り順番で回ってくる
後半Main④
全体練習みんなで練習できるものを入れる
C-DN 最後クーリングダウンは、小さい子は遊びでし
ょう。
まとめ
小さい子供も呼吸練習になるころにはすっかり水に
慣れて楽しめるようになっています。
難しい理屈を子供に教える必要ありませんが、コーチ
は理屈を知っている必要があります。
子供は、楽しく遊んでいたら泳げるようになっていた。
コーチは楽しく遊ばせながら泳ぎを教えるにはやはり、
そのためのテクニックは必要です。
頑張りましょう!